NAS の WebDAV は何のためか
WebDAV が効いてくるのは NAS を LAN の外から使う瞬間です。中身が HTTP なので公開するのはポート1つと証明書1枚で済み、SMB を丸ごと止めているホテルの Wi-Fi や社内プロキシも通ります。
何より先に決めるのは権限モデルです。Synology は共用フォルダー権限と匿名アカウント、QNAP は2つの権限ソースからの明示的な選択。ここを間違えると、WebDAV とは無関係な 401 に半日を使います。以下はすべて 2026年9月に kb.synology.com と docs.qnap.com で確認した内容です。
Synology:WebDAV Server パッケージ
DSM の WebDAV はファイルサービスの一部ではなく独立したパッケージです。
- パッケージセンターから WebDAV Server をインストールして起動します。
- [設定] > [HTTP/HTTPS] に移動します。
- [HTTP を有効化] と [HTTPS を有効化] を選択します。Synology の記述は「デフォルトでは、HTTP ポートは 5005、HTTPS ポートは 5006 に設定されます。ポート番号は、必要に応じてカスタマイズできます。」です。
- [適用] をクリックします。
- URL を誰かに渡す前に [設定] > [詳細設定] の4項目を決めます。
| 設定 | Synology の説明 | 初期値 |
|---|---|---|
| Enable Anonymous WebDAV | anonymous というユーザー名で共用フォルダーへアクセスさせる | 無効 |
| Enable DavDepthInfinity | ファイルパス長の制限を受けずにアクセス・削除できる | 無効 |
| 同時 HTTP 接続数の上限 | 同時 HTTP 接続数の上限を調整する | 150 |
| Enable WebDAV log | WebDAV 関連イベントを記録し、ログセンターで確認する | 無効 |
匿名 WebDAV はチェックボックス1つでは終わりません。コントロールパネル > 共有フォルダ で対象フォルダーを編集し、権限 タブで システム内部ユーザー を選び、Anonymous FTP/Presto/WebDAV ユーザーにアクセス権を与える必要があります。
もう1つ、このパッケージにはユーザー別・グループ別の速度制限があり、スケジュール指定もできます。設定は簡単、忘れるのも簡単で、半年後には回線障害と見分けがつきません。
QNAP:チェックボックス1つと本当の選択1つ
QTS は WebDAV を他のファイル共有プロトコルと同じ場所に置いています。QNAP の説明では WebDAV は「share, copy, move and edit remote content on the web」を可能にするものです。
- 管理者として QTS にログオンします。
- Control Panel > Network & File Services > Win/MAC/NFS/WebDAV > WebDAV へ(QNAP のドキュメントは英語 UI 表記のみ)。
- Enable WebDAV を選択します。
- 権限のソースを Shared folder permission か WebDAV permission から選びます。
- 必要ならポートを設定します。Dedicated port number は HTTP と HTTPS のポートを手で指定する選択肢、Web server port number は「select to use the default WebDAV port numbers」とだけ説明されています。
- Apply をクリックします。
考えるべきは手順4です。Shared folder permission は QTS で管理済みのアクセス権をそのまま使い、WebDAV permission は WebDAV だけに効く別のリストです。WebDAV がインターネット側の入口なら後者が正解です。
ドキュメントが書いていないことにも注意してください。QNAP のページに WebDAV の既定ポート番号は一度も出てきません。自社の例に現れる数字はウェブサーバーの 80 だけで、パスは http://172.17.45.155:80/Public です。
| Synology DSM | QNAP QTS | |
|---|---|---|
| 場所 | WebDAV Server パッケージ | Control Panel の Win/MAC/NFS/WebDAV |
| 既定ポート | HTTP 5005、HTTPS 5006 | 記載なし。例はウェブサーバーの 80 |
| 権限モデル | 共用フォルダー権限+任意の匿名ユーザー | 共用フォルダー権限か WebDAV 権限の選択 |
| URL の形 | http://nas:5005/ | http://nas-ip:port/shared-folder-name |
| 同時接続数の上限 | 150 | 記載なし |
Windows 11 から接続する
最もよくつまずく場所で、両社は別々の回避策を書いています。
QNAP はふつうのウィザードです。エクスプローラーで This PC を右クリックして Map network drive、パスは http://NAS-IP-address: port number/shared-folder-name(例 http://172.17.45.155:80/Public)、Reconnect at sign-in と Connect using different credentials を有効に。失敗したら QNAP のトラブルシューティングはレジストリに案内します。regedit で HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\WebClient\Parameters を開き、BasicAuthLevel の値を「2」にして PC を再起動、です。
Synology はもっと厳しい。Windows の「ネットワーク ドライブにマップ」で WebDAV 経由でアクセスするには「有効な SSL 証明書を取得し、HTTPS 接続経由で Synology NAS にアクセスしてください」とあります。既定では HTTPS の 5006 と、その PC が信頼する証明書です。同じ注記に1時間を失う一文も付いています。別のユーザーアカウントに切り替える前に Windows からサインアウトすること。Synology が Windows ユーザーに勧めているのは「非商用利用で無料のドライブ RaiDrive」です。
Windows 側の切り分けはここでは繰り返しません。専用ページがあります。非推奨になった WebClient サービスは Windows 11 で WebDAV が動かない、同じ失敗の2つの表示は 0x80070043 と net use error 67、ウィザードの拒否は 入力したフォルダーは有効ではないようです、全体の点検表は Windows から WebDAV に接続できない です。
macOS と Linux から接続する
macOS は NAS の WebDAV が最も素直に動くプラットフォームです。Finder で [移動] > [サーバーに接続](Cmd+K)を開きアドレスを入力します。Synology の例は http://pm.synology.com:5005/、QNAP の例は末尾に共用フォルダー名が付く http://172.17.45.155:80/Public。Synology の注記2つは見落としやすい。「WebDAV は Bonjour ブロードキャストに対応しています」、そして「お使いのデバイスで iOS 12 以上を実行している場合は、HTTPS を使用してください」。
Linux について Synology は「[場所] > [サーバーに接続]」から WebDAV (HTTP) か WebDAV (HTTPS) を選ぶ手順を書いています。GVFS なので GNOME Files に dav:// や davs:// を入れても同じで、コマンドラインでは cadaver を挙げています。ファイルシステムとしてマウントするなら davfs2 です。
bash
sudo apt-get install davfs2
sudo mount -t davfs https://nas.example.com:5006/ /mnt/nasNAS を疑う前に知っておきたい davfs2 の癖が2つ。ローカルにキャッシュするので、書き込みが終わったように見えて実際はまだ転送中のことがあります。そしてファイル作成で Resource temporarily unavailable が返るときの公式な対処は /etc/davfs2/davfs2.conf に use_locks 0 を書くことです。サーバーが LOCK を与えていない状態です。
リダイレクターと戦わずにドライブとしてマウントする
ネイティブの Windows クライアントと FUSE ドライバーの間に3つめの選択肢があります。アプリが実ネットワーク越しに NAS と WebDAV で話し、OS には loopback からマウントを渡す形です。AnyStorage はこれで、NAS の設定はアプリ内に一度だけ。マウントが欲しければアプリが自分のマシン上で WebDAV サーバーを動かします。サイドバーの Services、WebDAV タブ、Start、既定アドレス http://127.0.0.1:3211、Basic 認証は常に有効でユーザー名 anystorage、パスワードは初回起動時に生成される24文字。macFUSE も WinFsp も管理者権限も不要です。
正直に書くと 0.2.x の若いアプリです。無料プランは接続2つまで、このマウントは読み取り専用(書き戻しは Pro)、商用利用は可能。macOS 11+、Windows 10+、Ubuntu 20.04+ で動きます。一般論は クラウドストレージをローカルドライブとしてマウントする、ハブは WebDAV クライアントの選び方 です。
NAS の WebDAV が遅いとき
当てずっぽうではなく上から順に。原因は別々の場所にあり、NAS 側とは限りません。
- 自分で入れて忘れた速度制限。 WebDAV Server の速度制限を開き、個人とグループの設定を合成した実際の値が出る [結果] 列を見てください。
- 同時接続の上限。 Synology は同時 HTTP 接続数の初期値を 150 と明記しています。超えた要求は失敗ではなくキューに並び、体感はディスクが遅いときと同じです。
- NAS ではなくクライアント。 Finder はフォルダー表示1回でファイルごとに複数のリクエストを投げるので、数百件のディレクトリは中身が動く前に数百往復を消費します。計算は macOS の Finder で WebDAV が遅い理由。Mac からの「Synology が遅い」の大半はこれです。
- Windows で大きなファイルが死ぬ。 リダイレクターは
FileSizeLimitInBytes(既定 50,000,000 バイト)超の転送を拒否します。遅さではなく停止で、詳細は Windows の WebDAV 50 MB 制限。 - NAS の CPU と HTTPS。 Synology はネイティブ接続に実質 HTTPS を要求し、低消費電力機では TLS が重い。NAS 上で
grep -m 1 '^flags' /proc/cpuinfoにaesが無ければ暗号化は遅い経路です。 - 遅さに見えるチェックボックス。
DavDepthInfinityは初期値が無効で、有効にすると「ファイルパス長の制限を受けずにアクセス・削除できる」ため、再帰削除が止まるなら確認を。Synology は「UTF-8 をサポートする WebDAV クライアント」も推奨しています。
Synology の WebDAV が遅いのはなぜですか
公式ドキュメントから言える原因は4つ。WebDAV Server に残っている速度制限、同時 HTTP 接続数 150 の上限でキューが伸びている状態、ネイティブの Windows 接続に必須の HTTPS が AES-NI のない NAS で CPU を食うこと、そしてクライアント自身です。Mac では Finder のファイル単位のリクエストが他のすべてを上回り、これは DSM の設定では直りません。
Synology と QNAP の WebDAV ポートは何番ですか
Synology は HTTP が 5005、HTTPS が 5006 で変更可能と明記しています。DSM のウェブポートとは別なので、ファイアウォールの設定も別に必要です。QNAP は既定値を書いておらず、自分で指定するか Web server port number を選ぶかの二択で、自社の例では :80 が使われています。
NAS の WebDAV を HTTP のままインターネットに公開してよいですか
いけません。Basic 認証の資格情報は平文で流れますし、Synology はネイティブの Windows 接続に HTTPS と有効な証明書を要求します。HTTPS を有効にし、クライアントが信頼する証明書を用意し、公開はそのポートだけに。匿名 WebDAV は読み取り専用の公開共有のための機能です。
NAS では WebDAV と SMB のどちらが速いですか
LAN では SMB が大差で速いです。WebDAV は操作ごとに HTTP のオーバーヘッドを払い、多くのクライアントは1ファイルにつき何度も操作します。WebDAV が勝つのは速度ではなく到達性で、TLS 付きの HTTP ポート1つは SMB と違ってそのまま公開できます。
次に読むもの
NAS 側に問題がなくデスクトップ側が怪しいなら Windows 11 の無料 WebDAV クライアント か macOS の Finder で WebDAV が遅い理由 へ。NAS のジョブをクラウドドライブに向けたくて来たのなら Google ドライブは WebDAV に対応しているか が直接の答えです。