転送を止めているのは Windows 自身
エクスプローラーで WebDAV をネットワークドライブに割り当て、180MB の動画をドラッグする。進捗バーが動く前に転送が止まり、0x800700DF というエラーコードとともに、ファイルサイズが許容される上限を超えているため保存できない、という趣旨のメッセージが表示される。
サーバー側は何も拒否していません。データが送信される前に、Windows が自分でこのコピーを打ち切っています。
Windows で割り当てた WebDAV ドライブは、すべて WebClient というサービスが処理します。このサービスはレジストリに FileSizeLimitInBytes という値を持っていて、クリーンインストール直後の既定値は 50,000,000 バイトです。十進数で 5000 万、二進の単位に直すとおよそ 47.7 MiB。文書ファイルでは一生ぶつかりませんが、動画、データベースのダンプ、PSD、ディスクイメージではほぼ確実にぶつかります。
検索して来た方のために、ひとつだけ訂正しておきます。この制限を「WebDAV の 50GB 制限」と書いている記事が少なくありません。50GB ではなく 50MB です。ゼロが 3 つ抜けた説明が何年もコピーされ続けています。
レジストリで上限を引き上げる
管理者権限が必要で、変更はその PC 上のすべての WebDAV 割り当てに効きます。
regedit を開き、HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\WebClient\Parameters を開きます。FileSizeLimitInBytes があればそれを、無ければ同じ名前で DWORD (32 ビット) 値を新規作成してください。ダブルクリックして表記を 10 進に切り替え、希望するバイト数を入力します。上限いっぱいの 4294967295 にするか、2000000000 のように意図した数字で止めておくか、このどちらかが現実的です。
入力したらサービスを再起動します。WebClient は起動時にしかこの値を読まないため、再起動しないと数字を変えても何も起きません。管理者としてコマンドプロンプトを開き、net stop WebClient のあとに net start WebClient を実行するのが手早いやり方です。services.msc から再起動しても結果は同じ。そのうえでネットワークドライブを接続し直し、もう一度コピーを試します。
動かせない 4GB の天井
4294967295 は 0xFFFFFFFF です。この上限は 32 ビットで保持されているので、Windows 標準の WebDAV クライアントは 4GB 手前までしか進めません。これを超えるレジストリ値も修正プログラムも存在しません。
サイズ制限と混同されやすい失敗がもうひとつあります。転送開始直後ではなく、しばらく走ってから途中で切れる場合です。これは FileSizeLimitInBytes ではなくタイムアウトであることがほとんどで、WebClient のタイムアウト値も同じ Parameters キーの下にあります。回線が遅く 1 ファイルに数分かかる環境なら、あわせて大きくしておくと安定します。
WebDAV 50MB 制限はクライアント側にある
レジストリの編集より、こちらのほうが本質的です。FileSizeLimitInBytes は WebClient が持っている制限で、サーバーはその存在すら知りません。クライアントを替えれば、この制限そのものが消えます。
AnyStorage は WebDAV サーバーを自分の PC 上で動かします。サイドバーの「サービス」から WebDAV タブを開き、開始を押すと http://127.0.0.1:3211 が使えるようになります。HTTP Basic 認証は常に有効で、ユーザー名の既定値は anystorage、パスワードは初回に 24 文字がランダム生成されます。どちらも編集でき、コピーボタンも用意しています。アプリで現在接続中のストレージは、その接続名のフォルダとしてこの URL の直下に並びます。Synology や QNAP の NAS への SFTP、Google ドライブ、OneDrive、Dropbox、S3、Cloudflare R2 まで、20 種類の接続タイプをこの形で公開できます。
このサーバーは読み取りを HTTP Range のストリーミングで返し、書き込みもファイル全体をメモリに溜めずに流します。サーバー自体にサイズ上限はありません。同じ URL にサードパーティ製の WebDAV クライアントを向ければ、レジストリに触らずに 3GB のファイルが通ります。4GB を超えるファイルや大量のファイルを移す作業なら、マウント経由をやめて AnyStorage アプリ内で転送してください。アプリはストレージのバックエンドと直接やり取りするので、WebClient は一切関係しません。
先に断っておきたい点がいくつかあります。
- 無料版の WebDAV サーバーは読み取り専用です。つまりマウント先から読み出す方向で使うことになりますが、0x800700DF はその方向にも適用されます。読み書きは Pro の機能です。
- ファイルサイズを制限しているのと同じ WebClient は、既定で HTTP Basic 認証も拒否します。http:// の URL を割り当てるには、同じ Parameters キーの BasicAuthLevel を 2 にして、もう一度サービスを再起動する必要があります。
- 現行バージョンに TLS はなく、URL は平文の http です。既定で 127.0.0.1 のみを待ち受けているのはそのためで、LAN 公開を有効にするときはアプリが明示的に警告します。
- アプリを再起動した後は、その接続をアプリ内で一度開くまで WebDAV のルートに現れません。接続は遅延して確立されます。
どのルートを選ぶか
- 50MB 未満のファイル。既定値のままで問題ありません。
- 4GB 未満で、レジストリを編集できる環境。FileSizeLimitInBytes を設定し、WebClient を再起動すれば終わりです。
- 4GB を超える、またはレジストリを変更できない PC。同じローカル URL に別の WebDAV クライアントを向けるか、アプリ内で転送します。
2026 年時点でも WebClient は Microsoft が非推奨とするコンポーネントで、10 年以上前の既定値がそのまま残っています。WebDAV の転送が Windows でだけ失敗して他の環境では通るなら、まずクライアントを疑ってください。