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マウントと同期

同期せずにクラウドストレージをローカルドライブとしてマウントする

同期は全ファイルを SSD にコピーし、マウントは開いた分だけ読み込みます。ドライバなしでクラウドストレージをマウントする方法と使い分けをまとめました。

同期とマウントの実際の違い、そしてカーネル拡張や FUSE なしでクラウドストレージをネットワークドライブとして扱う方法。

クラウドストレージ マウント、同期せずクラウド利用、ネットワークドライブ化

2 TB のバケットは 512 GB のノート PC に入りません。宣伝文句では同じように扱われがちな「同期」と「マウント」が、実際にはまったく別物である理由は、だいたいこの一文に尽きます。

同期はコピー、マウントは必要な分だけ

同期クライアントの仕事は、リモートのフォルダの完全なコピーをローカルに持ち続けることです。ファイルはすべてディスクに落ち、読み込みは一瞬、オフラインでも作業できます。その代わり SSD が埋まる。相手が映像のアーカイブや、最初からノート PC に収まる前提のないオブジェクトストレージだと、ここで行き詰まります。

マウントは逆の発想です。ファイルマネージャが求めるのはディレクトリの一覧なので、返すのは一覧だけ。中身は、何かのアプリが実際に開いた瞬間に初めて流れ始めます。2 TB のバケットが Finder やエクスプローラーに並んでいても、SSD は 2 TB 消費しません。代わりに、ネットワークが切れれば手元に残るのはファイル名だけです。

各社のクライアントは「オンライン専用」のプレースホルダファイルで、この境界を何年もかけて曖昧にしてきました。出来もいい。ただし守備範囲は自社のドライブ一つ、フォルダ一つ、メニューバーのアイコン一つ分です。

同期のほうが正しい場面もあります

ここは正直に書いたほうが役に立ちます。

  • オフラインの時間が長い。飛行機、新幹線、つながってはいるが遅い会場の Wi-Fi。プレースホルダは役に立ちません。
  • アーカイブではなく、毎日触る作業セットである。日々編集する 4 GB のプロジェクトフォルダはローカルディスクに置くべきです。
  • ツリー全体を舐めるプログラムが動く。Git リポジトリ、写真ライブラリ、IDE のインデックス、ビルドツールは細かいメタデータ要求を何千回も投げるため、ネットワーク越しのマウントでは実用速度に届きません。
  • エディタがアトミック保存を使う。一時ファイルに書いてリネームする方式は、ローカルならほぼ無料、リモートだとかなり重い。

逆に、映像ライブラリ、デザイン素材、ビルド成果物、バックアップ先、ログのアーカイブ、そして編集する回数より眺める回数のほうが多いファイルは、マウントのほうが向いています。

マウントに至る三つの定番ルート

各社純正クライアントのオンライン専用モード

Dropbox、OneDrive、Google ドライブのパソコン版には、いずれもオンライン専用に近いモードがあります。ソフト自体は悪くありません。問題は、ベンダーごとにクライアントが増え、アップデータが増え、マウント先も固定されること。Google のものには Linux 版がなく、S3 や Cloudflare R2、Backblaze B2、MinIO のようなオブジェクトストレージには純正のデスクトップクライアント自体が存在しません。

FUSE ベースのドライバ

上級者おなじみの経路です。macFUSE と rclone mount、あるいは sshfs や s3fs。本物のファイルシステムが手に入る代わりに、カーネル拡張を抱えることになります。Apple Silicon では復旧モードでセキュリティ設定を下げ、何度か再起動し、次の macOS メジャーアップデートで壊れないことを祈る流れです。Windows では管理者権限で WinFsp ドライバを入れます。そのあとにキャッシュモードの選定、再起動後も維持するための launchd や systemd のユニット、設定ファイルの保守が待っています。

OS が最初から話せるプロトコル

SMB、FTP、WebDAV。どのデスクトップ OS にもクライアントが同梱されています。ドライバ不要、管理者パスワードの要求もなく、OS アップデートのたびに入れ直す必要もありません。難点は、クラウド事業者がこれらを話さないこと。だからローカルに中継役を一つ置きます。

ローカルのエンドポイント経由でクラウドストレージをマウントする

その中継役が、AnyStorage に内蔵された WebDAV サーバーです。サイドバーの「サービス」から WebDAV タブを開き、開始を押す。既定のアドレスは http://127.0.0.1:3211 で、ポートは 1 から 65535 の範囲で変更できます。HTTP Basic 認証は常時有効。ユーザー名の既定値は anystorage、パスワードは初回利用時に 24 文字がランダム生成され、どちらも編集可能で、再生成ボタンと三つのコピーボタンが付いています。有効のままにしておけば、次回アプリを起動したときにサーバーも一緒に立ち上がります。

アプリ内で現在接続中のストレージ接続は、接続名のフォルダとしてこのエンドポイントの直下に並びます。S3 バケット、Cloudflare R2、Google ドライブ、Dropbox、Synology や QNAP の NAS に立てた SFTP、ローカルフォルダ。合計 20 種類の接続タイプが、別々のマウントではなく一つのマウントの中に同居します。

マウント自体は OS 標準の機能で行います。macOS なら Finder の「移動」から「サーバへ接続」、Cmd+K でも構いません。アドレスを貼り付け、登録ユーザーとしてアプリ側の認証情報を入力します。Windows ならエクスプローラーの「PC」から「ネットワーク ドライブの割り当て」に同じアドレスを貼ります。サードパーティ製の WebDAV クライアントでも同じです。アプリにワンクリックのマウントボタンはありません。アドレスとコピーボタンを渡すところまでがアプリの役目で、マウントは OS が行います。

読み込みは HTTP Range を使うので、6 GB の動画でシークバーを中央に飛ばせば、6 GB をダウンロードし終えるのを待たずにそこから再生が始まります。書き込みもストリーミングで、ファイル全体をメモリに溜め込みません。

カーネル拡張も、macFUSE も、WinFsp も、管理者権限も、セキュリティ設定の緩和も要りません。設定ファイルもなければ、当てずっぽうで選ぶキャッシュモードもない。macOS、Windows、Linux で同じ挙動になり、OS のメジャーアップデートで消えることもありません。

できないこと

  • 無料版では WebDAV サーバーは読み取り専用で動きます。読み書きは Pro の機能です。Pro でも安全側に倒したいときは、あえて読み取り専用に設定できます。
  • 現行バージョンに TLS はありません。アドレスはただの http なので、127.0.0.1 に留めておいてください。任意の LAN アクセスモードは 0.0.0.0 にバインドし、そのときはアプリが明示的に警告を出します。Basic 認証の資格情報が平文でネットワークを流れるためです。
  • アプリを再起動した直後は、その接続をアプリ内で一度開くまで WebDAV のルートに現れません。接続は遅延して確立されるためです。新規に作った接続はサーバーを再起動しなくても現れます。
  • 本当の意味のファイルロックはないため、複数台から同じファイルを同時編集しても保護されません。便利なマウントであって、共同編集の基盤ではありません。
  • マウント越しに最上位の接続フォルダを削除・名前変更することはできず、異なる接続どうしで直接ファイルを移動・コピーすることもできません。いったん手元に落としてから上げるか、アプリ側で処理してください。
  • Windows 標準の WebDAV クライアントには事情があります。WebClient サービスは 2026 年時点で非推奨扱いのうえ停止していることが多く、http での Basic 認証はレジストリの HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\WebClient\Parameters にある BasicAuthLevel を上げるまで拒否されます。FileSizeLimitInBytes の既定値は 50,000,000 バイトで、これを超えるコピーは 0x800700DF で失敗します。サードパーティ製の WebDAV クライアント、あるいは大きな転送を AnyStorage 本体で行えば、いずれも回避できます。

マウントは同期の代わりではなく、別の問いへの答えです。ディスク容量を払わずに、普通のアプリから今すぐこのファイルを開けるか。バケットやアーカイブ、映像ライブラリについては、その答えは「開ける」であるべきで、そのためにカーネル拡張を入れる必要はないはずです。